回想法には、認知症患者の症状を緩和する効果があります。認知症になると、自分の身になにが起きているのかわからなくなったり、相手と自分がどういった関係なのかが思い出せなくて、パニックに陥ったりします。ですが、回想法により過去を思い出すことで、患者はこれまで自分がどんな人生を歩んできたのかを再確認し、ゆっくりと過去から現在へと記憶が繋がってゆきます。その結果、自分が現在どういった状況にいるのか、また相手と自分はどのような関係だったのかを思い出すことができ、症状が改善される可能性があります。新しいできごとを覚えていることは難しくても、過去のできごとはよく覚えているという認知症患者は多くいます。回想法により、過去の自分を思い出し相手に語ることで、脳が刺激されて認知症の進行を遅らせる効果が得られるのです。

そして、回想法には認知症患者の心を穏やかにする効果があります。患者のなかには、覚えていられないことに不安を感じたり、生活に不自由さを感じて、将来に対して絶望を感じてしまう人もいます。なかには、周囲に対して心を閉ざしたり、鬱のような症状を発症する人もいます。ですが、懐かしい映画や音楽に触れて、過去に自分が経験した楽しさや嬉しさを思い出すことで、次第に心が穏やかに変化していく可能性があります。患者の心が落ち着いてくると、コミュニケーションもとりやすくなります。回想法による認知症のケアは、患者本人が前向きな気持ちになるための治療法でもあるのです。